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ブータン「世界一幸せな国」の幸福度ランキング急落 背景に何が?

南アジアにあるブータンは、発展途上国ながら2013年には北欧諸国に続いて世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られるようになった。国民が皆一様に「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と答える姿が報じられたのを覚えている人もいるだろう。

 しかし、ブータンは2019年度版で156か国中95位にとどまって以来、このランキングには登場していない。

「かつてブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入ってこなかったからでしょう。情報が流入し、他国と比較できるようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がったのです」(友野さん・以下同)

 それまで幸せを感じていても、人と比べ始めたとたんに幸福度が下がる。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。

「日本の幸福度が低いのは、他人と比べたがる気質も関係しているでしょう。精神医学においても、他人と比較する人は幸せになれないことがわかっています。欧米人は、他人と自分を比較したがらない。横並びを嫌い、収入、学歴、容姿、ファッションなど、さまざまな要素で他人と違うことを好みます」

GDP(国内総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重視
 近年は特に、SNSの普及などにより、他人と自分を比較して幸福度が下がる人が増えている。

 2017年、英王立公衆衛生協会が発表した調査報告では、SNSに投稿された画像を自分と比較することで、劣等感や不安感が高まることがわかっている。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所で幸福学を研究する前野マドカさんが言う。

「SNSに投稿される画像には“虚像”も含まれます。投稿した人の本当の姿や本心までは推し量れません。それなのに、高級レストランや海外旅行、ブランド品などの写真を見るとうらやましくなり、自分も他人にうらやましがられたくなる。そうして承認欲求だけが膨らみます」

 すると、他人との比較や他人からの評価でしか幸せを測れなくなり、どつぼにはまる。もちろん、これは一般庶民もお金持ちも同じだ。家計コンサルタントの八ツ井慶子さんも言う。

「自分の年収が順調に増えていても、他人がそれ以上に増えていると、その人の幸福度はそれほど上がらないといわれています。誰かと比較することで、幸福度を下げてしまうのです。傾向として、他人を気にする人は、いくら年収や貯蓄が増えても幸福を感じにくい。一方、いい意味で自分中心の人はまわりに流されないので、幸せそうにわが道を進んでいます」

 前出のブータンが“幸せの絶頂期”だった頃、当時の国王は「GDP(国内総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重視する」と語った。

「お金のほか、住まいや食べ物など、200以上の項目について調査してきた結果、これらのあらゆる項目がバランスよく幸福度に貢献していることがわかりました」(八ツ井さん)

 どれか1つでも突出しすぎていたり、著しく欠けている国はGNHが低い。ブータンはほとんど偏りがなかったのだ。

 やすらぎ(健康、安心)、つながり(人間関係)、達成感(お金、仕事)──この3つがバランスよくそろっていてこその幸せなのだ。たとえ年収が1000万円あっても、不治の病に侵されていたり、孤独だったりすれば、幸せは感じられない。貯蓄がなくても、それなりに健康で、信頼できる人がいれば不幸ではない。

 ひょっとしたら、私たちの多くが、もうすでに「幸せを買えるだけのお金」は手にしているのかもしれない。

※女性セブン2021年11月4日号


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